プーシキン美術館展――旅するフランス風景画

※2018年10月14日をもって、終了いたしました。

クロード・モネ《草上の昼食》1866年クロード・モネ
《草上の昼食》1866年
珠玉のフランス風景画65点が集結
どこまでも広がる海原、うっそうと生い茂る森の木々、はるか彼方にそびえる山並み……どれも絵画でよく見かけます。しかし、私たちの眼に驚きと喜びをあたえる風景の数々も、もとをたどれば「背景」でした。あくまでも画中のドラマを盛り上げる舞台、引き立て役にすぎなかった自然そのものに焦点が当てられたとき、はじめて「風景画」は誕生します。
 この展覧会で紹介するのは、プーシキン美術館のフランス絵画コレクションより厳選した、風景画65点です。17世紀にはじまるフランス風景画、その深化と多様化の道行きをたどり、あらためて「風景」について考えてみることが、おもな目的となります。
クロード・ロラン《エウロペの掠奪》1655年クロード・ロラン
《エウロペの掠奪》1655年
ユベール・ロベール《水に囲まれた神殿》1780年代ユベール・ロベール
《水に囲まれた神殿》1780年代
ギュスターヴ・クールベ《山の小屋》1874年頃ギュスターヴ・クールベ
《山の小屋》1874年頃
風景画の深まりと広がり
プーシキン美術館展は前半と後半、おおきく二部に分かれます。前半で紹介するのは、風景画の「深まり」です。風景が絵画の一ジャンルとして定着し、独り歩きするプロセスとはいかなるものか。風景画の黎明期、「こうあるべき」理想の風景を描いたクロード・ロランの絵画から、19世紀、「あるがままの」自然風景に目を向けたバルビゾン派の画家たちまで、画家と世界の関係が少しずつ変化していく様子をまずは確認していきます。
 つづいて、展覧会の後半でとりあげるのは、印象派以後の風景表現です。ただしここでは、時間軸に沿った紹介がなされません。問題となるのは、風景画の「広がり」。パリを起点に、パリ近郊、南仏、海の向こうといった具合に、地理にもとづく整理がなされます。風景、と一言で言っても、その在り方はさまざまです。アンリ・ルソー作《馬を襲うジャガー》のように、自分の目で実際に見たわけではない想像上の風景さえ、そこには含まれます。
ジャン=フランソワ・ラファエリ《サン=ミシェル大通り》1890年代ジャン=フランソワ・ラファエリ
《サン=ミシェル大通り》1890年代
アルベール・マルケ《パリのサン=ミシェル橋》1908年頃アルベール・マルケ
《パリのサン=ミシェル橋》1908年頃
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》1905-06年ポール・セザンヌ
《サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め》
1905-06年
風景は「現れる」
画家がこの世界をまなざし、絵に描くとき、どんな場合であれ「客観的」ではいられません。画家にかぎらず、人は、自分なりに美化した自然を「風景」として味わっています。風景は在るものではなく、現れるものだといえるでしょう。その「現れかた」は人それぞれです。風景画を見る経験とは、この世界との関わり方を垣間見る経験にほかなりません。会場を出たあと、今度は「あなたの風景」に意識を向けてもらえたら、展覧会担当者としては嬉しいかぎりです。
 ……そうそう、実はこの展覧会、毎週金曜日・土曜日の夜間開館時は、会場内が撮影可能となっています(17時から21時まで、一部作品を除く)。「風景画を鑑賞している風景」を写真に収めてみる、なんていうのはいかがでしょうか?
アンドレ・ドラン《港に並ぶヨット》1905年アンドレ・ドラン
《港に並ぶヨット》1905年
ポール・ゴーガン《マタモエ、孔雀のいる風景》1892年ポール・ゴーガン
《マタモエ、孔雀のいる風景》1892年
アンリ・ルソー《馬を襲うジャガー》1910年アンリ・ルソー
《馬を襲うジャガー》1910年
画像はすべて ©The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow.

福元崇志(国立国際美術館 研究員)

プーシキン美術館展──旅するフランス風景画

★開催期間:2018年10月14日(日)まで
★開館時間:10時00分~17時00分 金曜・土曜は21時00分まで(入場は閉館の30分前まで)

※休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日に休館:ただし、2018年9月18日(火)、10月9日(火)は開館)
※都合により変更になる場合があります

(2018年9月/※画像はイメージです)
国立国際美術館
住所
大阪府大阪市北区中之島4-2-55
TEL
06-6447-4680(代)