【中之島散策~中之島人を訪ねて】
大阪のリバーサイドをもっと楽しく、もっと賑わいを。
大阪シティクルーズ推進協議会事務局長 大江幸路さん

【中之島散策~中之島人を訪ねて】大阪のリバーサイドをもっと楽しく、もっと賑わいを。大阪シティクルーズ推進協議会事務局長 大江幸路さん
大阪市内の河川では、毎日、多くの観光船が行きかっています。そんな観光船事業者が参画する組織が「大阪シティクルーズ推進協議会」。舟運会社をはじめ行政や他団体と連携し、水都大阪の水辺で船を用いた楽しい賑わいづくりを推進しているのが、同協議会の事務局長であり大阪水上バス株式会社の企画宣伝部長でもある大江幸路(おおえ こうじ)さん。
大阪シティクルーズ推進協議会とはどんな組織なのか、どんな役割を果たしているのか、大江さんに聞いてきました。
(トップの写真および★マークは、大阪シティクルーズ推進協議会提供)
大阪シティクルーズについて、説明される大江事務局長。舟運業界をけん引する、大阪の川遊びのリーダーともいえる。

大阪シティクルーズについて、説明される大江事務局長。
舟運業界をけん引する、大阪の川遊びのリーダーともいえる。

■各社バラバラだったサービス内容の一本化で、Win-Winの関係を構築

      -まず、大阪シティクルーズ推進協議会が設立された経緯など、お教えいただけますか?

「2009年の『水都大阪』という、官民をあげて取り組んだ水辺の賑わいイベントがきっかけですね。舟運会社も一丸となって、大阪を盛り上げて行こうという機運ができてきました。そこで当時、大阪水上バスの社長が、『業界をまとめる組織を作ろう』と呼びかけてできました」

      -何社ぐらいで始められたのでしょうか?

「正会員が10社ぐらいだったでしょうか。当時の主要な舟運会社が参加しました。準会員としてJR西日本さまや京阪電気鉄道株式会社(現在は京阪ホールディングス株式会社)など鉄道会社の他、旅行会社やアサヒビール株式会社さまなどの飲料メーカー、RRHOオペレーションズ株式会社(旧ロイヤルホテル)さまといった宿泊事業者など大阪を代表する企業に参画していただいています。
あとは協力会員として新聞やテレビなどのマスコミ各社。協力機関として自治体や公益財団法人などのみなさまで構成されています」

      -協議会ができる以前は、どのような状況だったのでしょうか?

「もう各社バラバラ(笑)。お客さまを取り合う競争相手でもありましたので、足並みが揃うはずもありません。プロモーションはもちろん、料金や乗り場、出航時刻なども自分たちで好きに決めていました。お客さまにとってもわかりにくかっただろうと思います」

      -会社によってサービス内容が異なっていると、確かにお客さまにとってはわかりにくいですね。

「一番の繁忙期は桜のシーズンです。大川の両岸に咲いた桜を船から眺めるのはまさに絶景で、多くのお客さまが乗船されます。そんな時こそ、各社の違いが明確になるのです。
たとえばA社の船に乗るには4~5時間待ちなのに、B社は割とすぐに乗れるといったことがありました。
船のやりくりに必死になっている会社もあれば、船を余らせている会社もある。お客さまを捌くので手いっぱいの会社もあれば、予約システムを取り入れて悠々とやっている会社もあるという状況でした」

      -それを、どのように変えていかれたのでしょうか?

「『大川さくらクルーズ』という共同運航にまとめました。出航場所を『八軒家浜船着場』に一本化し、同一料金、同一航路で最短約5分に1便、定時出航させたのです。
並んでお待ちのお客さまに、着船した船にどんどん乗っていただき、定時になったら空席があっても鐘を鳴らして出航させる、そういうシステムに変えました」

2024年の「さくらクルーズ」のポスター。個性的なイラストで注目を集めている。今や大阪の春の風物詩となった。★

2024年の「さくらクルーズ」のポスター。個性的なイラストで注目を集めている。今や大阪の春の風物詩となった。★

      -お客さまにとっては非常にわかりやすいですが、『自分はこの船に乗りたいのに、違う船が来た』などという声はなかったのでしょうか?

「チケットを買っていただく際に、当日に就航する船を紹介するようにしています。あくまでお望みの船に乗りたいとおっしゃる時は、『ちょっとお待ちいただくことになります』とご説明しています」

      -舟運会社の方では、納得されていましたか?

「当初は充分に、納得していたわけではなかったと思います。ただ効果が上がるのは確信していましたので、自信をもって進めました。
チケットは大阪シティクルーズ推進協議会で一括して販売します。お客さまはチケットの半券を船のスタッフに渡します。その半券の数量をもとに舟運会社へ支払いするようにしました。とってもアナログなやり方ですが(笑)。
各社から協議会に半券をシートに貼って持って来てもらうのですが、みなさんニコニコ顔で来られます(笑)。みんながWin-Winになることがわかれば、各社とも納得してやってくれますよ!」

      -舟運業界にとって、有意義な組織団体になったわけですね。

「業界がまとまり任意団体となるのは、いいことだと思います。行政との交渉にしても、一企業が個別にやるより窓口を一本化した方が、行政側の方にも親切だと感じます」

■2025年大阪・関西万博を見据えた海への進出で、協議会としての仕事はますます多忙に

      -大江さんは大阪シティクルーズ推進協議会の事務局長であると同時に、大阪水上バスの従業員でもあるわけですね?

「今は協議会の仕事の方が半分ぐらいになっています。来年は2025年大阪・関西万博がありますので、その関連で増えてきていますね」

大阪水上バスの事務所がある「川の駅 はちけんや」。大江さんは通常、ここで業務している。大阪の川遊びのベース・ステーションでもある。

大阪水上バスの事務所がある「川の駅 はちけんや」。大江さんは通常、ここで業務している。大阪の川遊びのベース・ステーションでもある。

オフィスで次の企画を練る大江さん。ここから楽しいクルーズやイベントが生み出されている。

オフィスで次の企画を練る大江さん。ここから楽しいクルーズやイベントが生み出されている。

      -どのような業務が増えているのでしょうか。

「今まで、シティクルーズといえば大江橋、淀屋橋から東側が中心でした。御堂筋の大江橋、淀屋橋は桁下が低くて、クルーズ船では通れないんですよ。だからどうしても、淀屋橋で折り返すコースになってしまいます。
しかし2025年大阪・関西万博で御堂筋から西の川筋が盛り上がってきており、会場となる夢洲に向かって海に乗り出すクルーズが計画されています」

      -それは楽しみですね。具体的には、どのようなクルーズでしょうか?

「大阪府と堺市が共同でやっている社会実験の例でいうと、JRユニバーサルシティ駅の近くにあるUCP(ユニバーサルシティポート)という船着場から2025年大阪・関西万博会場を1周して旧堺港に向かうクルーズがあります。
しかし旧堺港には桟橋がないので、仮設桟橋を作る必要があります。その申請や準備といった諸々の作業、調整のお手伝いをしています。
それに加えて、大阪シティクルーズ推進協議会として2025年大阪・関西万博航路をどうしていくか、模索しながら考えているところです」

ユニバーサルシティ駅の近くにある、ユニバーサルシティポート(UCP)。この写真は、「ネモフィラ・クルーズ(後述)」の時のもの。多くの乗船客で賑わっている。★

ユニバーサルシティ駅の近くにある、ユニバーサルシティポート(UCP)。
この写真は、「ネモフィラ・クルーズ(後述)」の時のもの。多くの乗船客で賑わっている。★

      -もう、目前に迫ってきていますが…

「川からベイエリアにかけては、大きな船も通るので、新航路を開いたりイベントを実施したりするには、いろいろ交渉事が必要なのです。たとえば漁業協同組合との調整、それから海上保安庁との調整などです。
そもそも川の船では海に出られません。海に出るというのは、とてもハードルが高いことなんです。急ぎつつも慎重に進めなくてはなりません」

      -シティクルーズの発展に大いに寄与されている大江さんですが、そもそも船や川にご興味があったのでしょうか?

「いやいや、全くない(笑)。母親が『ブラブラしていないで、バイトぐらいしなさい』と持ってきたのが、新聞に載っていた大阪水上バスのバイトの募集広告でした。
当時、会社ができて半年目ぐらいかな、それで結構な応募者数だったようですが、なぜか合格し、やがて正社員になっていました。それ以来ここひと筋、40年になります」

      -40年間で、すっかり船と川が好きになった?

「いや~、そんなに変わってはいませんね(笑)。
でも2009年の『水都大阪』の時に、いろんな方々とお会いして非常に楽しかったんです。それまでは、社外の人とお話しするのも苦手でした。行政の担当者と交渉するなんて、全然ダメでした。
しかし、いろんな業種の方々と出会うことで、自分が変わっていったのかもしれません」

      -そんな大江さんが、大阪シティクルーズ推進協議会の事務局長に就任された理由は?

「当社が大阪シティクルーズ推進協議会の代表企業を務めています。私は大阪水上バスの企画宣伝部長もやっていまして、その関係上、事務局長を担当させていただいたという次第です」

■いろんなアイデア検討中!これからもっともっと賑わいと楽しさを広げたい。

      -桜の季節に、各社と協力して「大川さくらクルーズ」を展開されているのは、先ほどのお話しでもありましたが、他に何かクルーズ企画はされていますか?

「2023年4月中旬から5月上旬に舞洲で開催された『ネモフィラまつり』の期間中、UCP(ユニバーサルシティポート)と舞洲仮設桟橋を結ぶ船便を運行しました。これは万博開催時の海上アクセスを想定したものでもありました。
期間中は約13,500人ものお客さまに乗船いただきました。特にリーガロイヤルホテルでランチの後、船でネモフィラ会場まで行く企画が大好評でした」

      -舞洲のネモフィラは有名で、多くの見学者で混雑していますので、それを海からアクセスできるのは便利ですね。

「はい、たくさんのお客さまに来て楽しんでいただけたことがうれしいですが、2025年大阪・関西万博に備えての準備になったことも大きいと思います」

ネモフィラ・クルーズの様子。多くの乗船客を乗せてUCPを出航した「キャプテン・ハリー」。★

ネモフィラ・クルーズの様子。多くの乗船客を乗せてUCPを出航した「キャプテン・ハリー」。★

      -大阪シティクルーズ推進協議会として、今ご計画中のことはありますか?

「先ほども申した通り、いろんな方々と知り合うことで、新しいアイデアを得ることも多いですね。私たちからすれば『できるわけがない』と思ってしまいがちですが。
たとえば堂島川、土佐堀川、大川に十数カ所の船着き場があり、そこでバル・イベントをやったらどうかという声があって、私は『無茶をいうな!』と思いながらも、何年かやったわけです。5枚綴りのチケットを販売して、それでバルで飲食できて船にも乗れるといったイベントです」

      -楽しそうですね!

「楽しいですけど、大変だったんですよ(笑)。あまり儲かった記憶もありませんし。でもそれを2025年大阪・関西万博の期間に合わせてやってみたら、もっと楽しくなるのではないかと思いますね」

      -やはり来年(2025年)の大阪・関西万博が大きなカギになってくると思いますが、それも含め、将来的にはどのような目標をお持ちでしょうか?

「やはり拠点の賑わいを作ることが、ダイレクトに舟運の需要拡大につながると思います。
私の関心は今『船に乗ってもらう』ということより、『川べりの賑わいを作る』ことの方に、重点が移っているように思えます。
以前、この八軒家浜でドローンを使ったイベントを行いましたが、その際の許認可を取得する業務などをお手伝いしました」

協議会のサイトでは、アクア・アンバサダー(水辺案内人)の「水辺 好太郎」というキャラによるクルーズや川遊びの情報も発信中。★

協議会のサイトでは、アクア・アンバサダー(水辺案内人)の「水辺 好太郎」というキャラによるクルーズや川遊びの情報も発信中。★

      -今まで事務局長をやってこられて、楽しかったこと、辛かったことは?

「さくらクルーズにしてもバルにしても、やるのは大変だけど、やったら楽しいんですよ。だから楽しいことはいっぱいあります。
辛かったのは、やはり協議会を立ち上げた時かな。各社の社長さんから『ウチの船の写真より、あっちの会社の船の写真の方が大きい!』とか『なんでウチの社名の方が下なんや?』とか、もう毎日そんなことばっかり(笑)。まぁ今にしてみれば、いい経験になっていますが」

      -最後になりますが「中之島スタイル」をご覧になった方で、シティクルーズに興味を持たれる方も多いと思います。何かメッセージをいただけますか。

「川から、中之島を見て欲しいということに尽きます。地面の上から見る景色とは、全く異なる新しい視点があります。
当社が運行している『アクアライナー』なんて、視点がほとんど水面すれすれじゃないですか。そこからビルを見上げたら、もう圧巻ですよ。ビルがとてもキレイにそびえ立っていて、まさしく摩天楼ということが実感できるんです。夜景も素晴らしいですよ。
一度、クルーズに参加していただくと、その魅力はすぐにわかっていただけると思います」

八軒家浜で川を行き来する船を見つめる大江さん。大江さんのご活躍で、大阪のリバーサイドやベイエリアは、これからももっと楽しみが増えていくことだろう。

八軒家浜で川を行き来する船を見つめる大江さん。大江さんのご活躍で、大阪のリバーサイドやベイエリアは、これからももっと楽しみが増えていくことだろう。

大阪シティクルーズ推進協議会
住所 〒540-0002 大阪市中央区大阪城2番地先
ホームページ http://osakacitycruise.info/