中之島散策

人と人がつながる魅力あふれるまち―中之島で進む「まちそだて」
中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会 事務局代表
岡 智恵子さん

中之島人をたずねて

2025.10.31 Fri

御堂筋から西の中之島ウエストエリアは、企業の本社ビルや商業施設が並ぶビジネス街。中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会は、ここに拠点を置く企業の発案で「まちをそだてる」ための集まりとして2012年に発足しました。それから14年間、中之島ウエストエリアの魅力を高めるとともに新たなファンづくりを目指し、官民協働によるエリアプロモーション活動を続けています。事務局代表を務める岡 智恵子さんに設立の経緯や活動内容、今後の展望などをお聞きしました。
(トップの写真および★マークは、中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会さまより提供)

中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会 事務局代表の岡 智恵子さん

■企業が集い、まちについて話し合うプラットフォーム

-中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会発足のきっかけをお教えください。

「発足は2012年8月1日、きっかけは2つあります。1つは、2012年にフェスティバルタワーが竣工し、今後賑わい施設の増加が見込まれるなか、中之島西エリアの在り方を企業の枠を超えて話し合う場が必要という意見が出てきました。当時私が「光のまちづくり」で中之島に関わっていたこともあり、企業の方々が集まり話し合うための会のお世話役を担い、発足することになりました。
もう1つは、大阪に訪れる人の流れが中之島の東西軸においては御堂筋を分岐点として東で止まってしまうという課題を抱えていたこと。これは、私が携わっていた大阪市のイルミネーションイベント「OSAKA光のルネサンス」で出ていた課題でもありました。特に2008年の「御堂筋イルミネーション」スタート以降は南北への人の流れが強まり、東西軸を担う中之島では西側に足を運ぶ人がさらに少なくなっていました。OSAKA光のルネサンスは多くの人が集まるイベントなのに、西側に人が集まらないのはもったいない。中之島全体で賑わいを創出したい。これが2つ目のきっかけでした」

-最初に取り組んだイベントは?

「第1回の開催は、2012年12月のOSAKA光のルネサンスに間に合わせるため、8月に会が発足されてから短期間で一気に進め、中央公会堂でやっていたプロジェクションマッピングの特別バージョンを、朝日放送本社屋の壁面を使って実施しました。初年度でもあり、あまり集客には期待していなかったのですが、リバーデッキに人があふれるほど、多くの方が来ました。魅力的なコンテンツがあれば人は流れる、西側にも人を呼びこめると1年目でわかりました」

■季節感のない中之島ウエストエリアに四季を演出する

-他にはどのようなことに取り組んできたのでしょうか?

「代表的な取り組みが「中之島ウエストものがたり」と題したシーズンプロモーションです。中之島公園のある東側はバラ園があり四季の変化を感じられますが、中之島ウエストエリアは季節感に乏しい。春夏秋冬をテーマとしたプロモーション展開で様々なイベントや催事などの情報を集約しパッケージ化することで季節感をアピールしていこうというのが「中之島ウエストものがたり」の考え方としてスタートしました。夏は打ち水、芸術の秋は音楽やアート等の文化的背景と絡めたイベント、冬はイルミネーションなど、季節感あるイベントを開催したり情報集約をしています。
季節毎のパンフレットには、オフィスワーカーに登場してもらったり、中之島ウエストの風景を活かした季節感を表現する等の工夫をしています」

中之島ウエスト・夏ものがたりの「打ち水プロジェクト」。★

中之島ウエスト・秋ものがたり「中之島まるごとフェスティバル」ではコンサートを実施。★

-川や船着き場を活かした「冬ものがたり」。今年はどんなプログラムなのでしょうか?

「今年で14年目を迎える「中之島ウエスト・冬ものがたり」ですが、ほたるまち港を川とまちの結節点として毎年中之島ウエストらしさを打ち出すために、水と光を活かした光のアートを展開してきました。
昨年まではラバー・ダックが展示されていましたが、その前には「光の実」という参加型の光のアートを展示したり、船着き場で音楽と光と噴水がシンクロする作品など様々な展開を行ってきました。
今年からは、御堂筋イルミネーションでも展示されている「光の箱」を開催します。
中之島ウエストの関係者150名が手作りした光の箱を並べて展示するもので、ステンドグラスのような光が浮かび上がります。
福島浜緑道には、音楽と光がコラボする光の小径が登場する等、また新しい水辺の風景を活かした光のアートに挑戦しますので、ぜひお越しいただきたいです」

御堂筋イルミネーションでの光の箱展示風景。★

■人が成長し、交流によって可能性が広がる「まちそだて」に

-中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会発足以降、イベントの実施等、中之島の魅力向上にご尽力されてきましたが、成果をどのように捉えていますか。

「14年間のこの活動で一番大きな成果を導いたのは、毎月1回、メンバーで集まって話し合う交流会を開催してきたことです。交流会はもうすぐ140回目を迎えようとしています。
オンラインが主となりつつある昨今ですが、こうしてみんなで顔を合わせて話し合うことで、会社単位を超えた人と人との交流が生まれてきていると思います。「まちそだて」で大事なのは、こういった場での交流がきっかけとなり、中之島ウエストに関係なくても互いに交流し、その輪が広がっていくことだと思うのです。
メンバーの活動だけでなく、地域活動としては、夏には打ち水を開催。参加者数は年々増え、今では70以上の企業、500人を超える方々が集まる大イベントに成長しました。また毎年4月と12月にはクリーンアップを開催。こちらも参加企業は40社以上となり、参加数は400名を超えたのですが、このエリアは本当にゴミが少なく、また安全性も配慮して参加人数に制限をかけさせていただいています。ですが、各企業の皆さん毎で、安全に配慮してユニフォームを用意されたり、準備運動をされてから来られたりと、とても熱心に参加されています。
ゴミ拾いをしていると、どこにゴミが多いかが分かるので、終了後にゴミの多かったところをマッピングいただいて参加者とデータを共有することで、各社内でもポイ捨てを減らすようお声がけを頂いているともお聞きします。
成果とは、どういったことか、なかなか判断しづらいですが、いろんな方々がまちに関わる事で、まちを好きになるという機会になってくださっていたら嬉しいなと思っています」

ゴミ拾いイベント「クリーンアップ活動」での集合写真。★

-「まちそだて」とはどのようなものとお考えですか?

「まちを育てることは、人と人との交流を育てることで、関わる人や企業が成長発展することなのかと思っています。一番難しいのは、関わる関係性を持続し自立させること。「育てる」という言葉は途中で途切れないという意味も含まれると思っているので、そのプラットフォームがどうやって時代を紡いでいくのかは大きな課題かと思います。とはいえ、先が不安だからやらないより、今私たちのできることをやり、「まちそだて」の重要性が多くの方々に伝わればと思っています」

-取り組みのなかで苦労されたことについてお聞かせください。

「やはり毎月1回の交流会の話題探しですかね(笑)。1年間のプログラムは組んでいますが、交流会に参加したくなるような情報や話し合いの場をどう作るかは難しいところです。
関係者だけで集まる会もありますが、テーマを決めていろんな方々と協働しコンテンツを作ることも多くあります。例えば、大阪府西大阪治水事務所さんと協働している防災減災情報交流会。2018年に近畿地方に上陸した台風20号では、高潮の時間帯と台風が重なり、三大水門を閉めて大阪都心を守ったということがありました。もしも水門を閉めなければ7兆円の被害が出たともいわれています。以前より川からの災害については大阪府さんにも情報提供いただいてきましたが、この情報をお聞きし、行政からの情報提供だけではなく、民間が欲しい情報も行政が知ることで、双方の危機感が共有されるのではということから「情報交流会」として開催することとしました。
開催毎に会場は満席となり、こういった機会の重要さも感じています。
私たちプラットフォームは、様々な関係者が気軽に集まり話し合える場を作るという役割だと思っていますが、それには多岐にわたる情報への理解も求められるので、そこが一番大変であり、たのしいところでもありますね」

「津波・高潮ステーション」の見学を2014年から継続して実施。★

■川が流れ夕日が見える、創造性が広がる環境を大切にしたい

-中之島の魅力はどのような点であるとお考えでしょうか。

「川のおかげで広がる空でしょうか(笑)。こういった見渡せる空間は、人の発想性、創作性を深めてくれるクリエイティブが成長する環境が整っていることが大きな魅力かと思います。
中之島の夕焼けはとても美しいです。それは川の延長線上に日が沈むことで、夕焼けのオレンジが川に映し出されるという不思議な風景が生み出されているからかと思います。
そんな贅沢な風景を中之島ウエストの各企業のビルから見ることができるのですから、大阪都心で最も贅沢で魅力的な環境であると思います」

-中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会で今後力を入れていきたいことをお聞かせください。

「10/13で大阪関西万博が終りました。中之島ウエストはあまり観光地とは言えない環境ですが、それでも外国人の来訪は目に見えて増え続けています。またなにわ筋線の開通により東西と南北の新たな結節点が増えることもあり、在住者や就労者、来訪者の変化も著しくなると考えます。そんな中でこそ、私たちの活動は、その基礎となる人と人との交流を継続的に育める環境を作り続けていくことが大切なのだと思っています。
若い世代がまちに関わりたくなるような場とは何か。答えはやりながら考えるのかもしれませんが、今後も人と人が笑顔で集いたくなる場を、いろんな方のアイデアもいただきながら続けていければと思っています」

中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会

 中之島ウエスト・エリアプロモーション連絡会は、中之島2丁目から6丁目、福島1丁目から2丁目及び周辺企業を対象とし、本エリアの個性化と魅力向上と共に、新たなファンづくりを目指し、人と人との交流を大切に、官民共創によるブランディングとプロモーション活動を行っていきます。