【中之島散策~中之島人を訪ねて】
唯一無二のバラ園を、誇りに思って欲しい
「京阪園芸」薔薇のソムリエ 小山内 健さん


小山内さんは、日本におけるバラの第一人者ともいえる存在。有名番組「TVチャンピオン・全国バラの花通選手権」を2回も制覇。さらにはNHK「趣味の園芸」で講師を務めるなど、バラ愛好家からは絶大な知名度と信頼を得ており、著作も多数出版されています。★

小山内さんは、日本におけるバラの第一人者ともいえる存在。有名番組「TVチャンピオン・全国バラの花通選手権」を2回も制覇。さらにはNHK「趣味の園芸」で講師を務めるなど、バラ愛好家からは絶大な知名度と信頼を得ており、著作も多数出版されています。★

北浜、難波橋の東側に広がる『中之島バラ園』は、オフィス街の中にありながら、いつも私たちの心を和ませてくれる憩いのスポットです。
高層ビルを背景に、シーズンになれば色とりどりのバラが咲き誇り、その鮮やかな景観に多くの人たちが心奪われます。
 
今回は、約10年前に行われたバラ園のリニューアルの際に、新しいバラ園のコンセプトを構想された日本有数のバラのスペシャリスト、小山内健(おさない けん)さんに、中之島バラ園に込められた想いをおたずねしました。

リニューアル前のバラ園で、アドバイスや技術指導を行う

バラ園は約10年前にリニューアルし、現在の姿になりましたが、小山内さんがリニューアルに関わるようになった経緯をお聞きしました。

「私はリニューアルする前から、この中之島バラ園のバラの管理指導をさせていただいていました。
以前のバラ園ができたのが昭和30年代で、年数の経ったバラが多く、なかなか美しい姿を保つのが難しくなっていました。
その状況の中で、どうしたらこの地で力強く育てられるか、といったことを考えながら管理指導していました」

       当時の中之島バラ園は、どのような状況だったのでしょうか。

「実はバラにも流行があって、昭和30~40年代に植えられたバラとなると、どうしても時代遅れになるのも出てきます。
また、バラも老化しますし、そもそも中之島は低地ぎみで浸水しやすく、植物にとって重要な土を良い状態に保つにはバラにとってあまり良い環境とはいえませんでした。
そこで環境面の改善も含めて、バラ園のリニューアルに取り組みました」

バラに話しかけるように接している小山内さん。「まさに子育てに似ています」とのこと。中之島でも、たくさんのバラとお話をされているのかも(京阪園芸ガーデンズにて)。バラに話しかけるように接している小山内さん。「まさに子育てに似ています」とのこと。中之島でも、たくさんのバラとお話をされているのかも(京阪園芸ガーデンズにて)。

バラの歴史をめぐり、バラの未来を見つめる場に

新しいバラ園に作り替えるにあたり、小山内さんは「バラの歩んできた道、歴史を感じられるバラ園にしたい」と考えていたそうです。

「これからの新しいバラ園を作るのですから、21世紀に向けて流行のものを取り入れたいという思いはあったのですが、
すでに咲いているバラを蔑ろにする事はできません。
そこで思いついたのが、バラの「歴史」「歩んできた変遷」を見る人達に感じてもらえるバラ園にするということでした。
これはリニューアルに携わった当社のメンバーみんなが考えていた事だったのです」

       具体的には、どのような手法をとられたのでしょうか。

「今から150年ぐらい前に、世界中が認める四季咲きの大輪バラが誕生しました。
バラの色、形、大きさにはその誕生年のバラの流行があり、時代ごとの違いがあります。
そこでバラ園の真ん中のブロックは、はじまりに一年中花を楽しめる四季咲きのバラを植え、10年ごとにバラの進化をたどって行けるようにしたのです。
難波橋から階段を下りた一番手前が、150年程前の品種。そこから天神橋に向かって現在の品種を植えるよう植栽されています。
途中に『ばらぞの橋』という小橋があるのですが、その橋の向こうがだいたい、21世紀に誕生したバラとなるわけです」

小山内さんにお聞きするまで気付きませんでしたが、確かに足元を見れば年代が記された銘板が埋められていました。
中之島バラ園は、単にたくさんのバラが楽しめるだけでなく、時代によって変わるバラの年表を辿れる場所だったのです。

足元を見れば、年代が記された銘板が! 「1970年」と記されたこの一画は、今から50年ほど前の流行の品種が植えられているエリア。足元を見れば、年代が記された銘板が!
「1970年」と記されたこの一画は、今から50年ほど前の流行の品種が植えられているエリア。

       そういった中之島バラ園ならではのお話を、もっともっとたくさん教えてください。

「以前は、バラが美しく咲き誇る5月と10月、年に1、2回、鑑賞に来られた方にガイドをしていました。
しかし新型コロナの影響もあり、現在は中断しています。皆さんの生活が元通りになり、バラ園に来ていただけるようになった際にはバラのガイドを再開したいと思っています」

新しい品種の作出に取り組む小山内さんの2003年の自信作「トロピカルシャーベット」は、「はらぞの橋」を東に渡った奥に植えらています。新しい品種の作出に取り組む小山内さんの2003年の自信作「トロピカルシャーベット」は、
「はらぞの橋」を東に渡った奥に植えらています。

今回バラ園を撮影したのが1月の為“5月に見ごろとなる「トロピカルシャーベット」の写真をお借りしました。黄色とピンクの繊細なグラデーションが、とても美しい。★ 今回バラ園を撮影したのが1月の為、5月に見ごろとなる「トロピカルシャーベット」の写真をお借りしました。
黄色とピンクの繊細なグラデーションが、とても美しい。★

大都市の真ん中で、バラが健やかに育つ環境を追求

中之島で美しいバラ園を作るにあたり、もうひとつ注力されたのがバラの育成環境の改善でした。

  

「以前の中之島バラ園は土地が低い影響もあり、台風などが来れば水に浸かっていたのです。
ビル風も強くて、しかも夏はヒートアイランドとなるので、バラにとっては厳しい環境です。
そこで庭園の設計の人達と相談し、川に近いところに盛り土をし、川の水や風からバラを守るように工夫しました」

  

この他にも、全面に芝生を引きバラの根を熱から守るようにするなど、さまざまな工夫を施されています。
また、この中之島を中心とした都市緑化整備事業に小山内さんが属する京阪園芸株式会社が携わり、
その功績により『2012年土木学会デザイン賞最優秀賞』が贈られました。

「中之島バラ園は、大都市の真ん中にあるバラ園としては、唯一無二といえる、とても整備された美しいバラ園だと思います。
東京にもバラ園はいくつもありますが、東京から来た人を中之島に連れてくると、『都市の高層ビルや高速道路の風景と、色とりどりのバラが見事に咲き誇り溶け込んでいる』ってとてもびっくりしています。
それが中之島バラ園の特長だと思っています。それほど中之島のバラ園って、凄いんですよ。大阪の宝というか、誇っていいのではないかと思います。
まさに都会の中のオアシス、憩いの場所なんです。しかも無料で楽しめるんですよ(笑)」

川(写真右手)に向かって、土地が盛り上がっている。これによってバラを浸水やビル風から守っている。川(写真右手)に向かって、土地が盛り上がっている。これによってバラを浸水やビル風から守っている。

高層ビルや高速道路の高架と、しっくりと調和しているのが、中之島バラ園の魅力のひとつ。★ 高層ビルや高速道路の高架と、しっくりと調和しているのが、中之島バラ園の魅力のひとつ。★

リニューアル後、約10年。これからがいよいよ本格的な見ごろに

「もっと皆さんに中之島バラ園を知って欲しい、見に来て欲しい」という小山内さんに、バラ園の魅力、見どころをご紹介いただきました。

  

「リニューアルして10年ですから、バラとしては成熟期ですね。豪華さの中に落ち着きがあって、とても見栄えがあります。
これからますます、たくさんの美しい花を咲かせてくれると思います」

バラ園のこんな楽しみ方も教えてもらいました。

「夜のバラもいいんです。多くのバラ園は夜になると閉園してしまいますが、ここは24時間、好きな時に入れます。
中之島の周囲を流れる川面に都会を灯す光たちが溢れるように煌めき、そしてバラ園の色彩豊かなバラたちを浮かび上がらせる様子は、
何とも幻想的な風景です。本当に素晴らしい!」

小山内さんによれば、雨の後もおすすめだそうです。

「雨・・・夜露でもいいのですが、そんな時は花びらに水滴がかかっているでしょう。
それをそっとすくって、香りをかいでみてください。とってもいいバラの香りがします。
天然の香水なんです」

バラの魅力を誰よりも熟知する小山内さんにとって、中之島バラ園は『楽園』なのかもしれません。

冒頭にも掲載した写真。小山内さんが一番好きな「ばらぞの橋」から★冒頭にも掲載した写真。小山内さんが一番好きな「ばらぞの橋」から★

ここに来ればいいことがあるオアシス・・・中之島とはそういう場所

バラ園に限らず中之島は、小山内さんにとってどんな場所なのか、お聞きしてみました。

「心の底から癒される、気持ちが豊かになる場所かな。やっぱりバラばかりやっていると、しんどい時もあるんですよ(笑)
そんな時、ふらりとこの中之島バラ園に来るとホッとしますね。私にとって心のオアシスなんでしょうね」

最後に小山内さんに、皆さんへのメッセージをお願いしました。

「『フランスの宮殿に咲き誇るバラ園』と聴くと、想像するだけでとても素敵な印象をもちますよね。
行けるものなら行ってみたい、見てみたいと思いませんか?中之島バラ園は、都会の真ん中にあるフランス様式のバラ庭園です。
いつでも見たい時に見ることができる、まさに大阪が誇る最高のバラ園なんです。バラの咲く季節にぜひ訪れて、癒されに来てください!」

小山内さんのバラにかける熱い想いを、私たちがしっかりと受け止め、これからもっともっと、中之島バラ園を楽しんでみたいと思います。

(写真★は、小山内健さん提供)

バラに対する熱い想いを語られる小山内さん。年間120もの講演をこなす年もあったとか。 「薔薇の鑑定士」「薔薇のソムリエ」として、更なるご活躍が楽しみです。 (京阪園芸ガーデナーズにて)バラに対する熱い想いを語られる小山内さん。年間120もの講演をこなす年もあったそうです。
「薔薇の鑑定士」「薔薇のソムリエ」として、更なるご活躍が楽しみです。
(京阪園芸ガーデナーズにて)

中之島バラ園
住所 〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島1-1
アクセス 〇地下鉄堺筋線北浜駅下車 徒歩3分
〇京阪中之島線なにわ橋駅下車 徒歩1分
〇京阪本線北浜橋駅下車 徒歩3分
ホームページ http://www.osakapark.osgf.or.jp/nakanoshima/
京阪園芸株式会社
住所 〒573-0061 大阪府枚方市伊加賀寿町1-5
電話 072-844-1134
アクセス 〇京阪本線枚方公園駅下車 徒歩5分
ホームページ 京阪園芸株式会社
京阪園芸ガーデナーズ
京阪園芸・小山内さんの紹介ページ