【中之島散策~中之島人を訪ねて】
中之島の開発は、まだ途上。魅力発信で、大阪を代表する地域に!​
中之島高速鉄道株式会社 代表取締役社長 中野道夫さん

中之島に行く時、京阪電鉄の中之島線を利用する方も多いと思います。
ご存じの方もいるかもしれませんが、実は中之島線の線路を建設・保有しているのは京阪電鉄ではなく、中之島高速鉄道という企業。
今回の「中之島人を訪ねて」は、同社代表取締役社長である中野道夫さんに、中之島線開業の経緯や中之島の未来、そして中之島に対する思いなどをお聞きしました。
(トップの写真および★マークは、中之島高速鉄道株式会社提供)

中之島への熱い思いを語られる中野社長。2017年6月から2021年6月まで、京阪電鉄の社長も務められた。

京阪電鉄より線路使用料を受け取る第三種鉄道事業者。


      – まず、「中之島高速鉄道」とはどのような会社か、お聞かせください。

「京阪中之島線の建設、保有を目的として2001年7月に設立された、第三種鉄道事業者です。中之島線は2008年10月19日に開業し、第二種鉄道事業者である京阪電気鉄道が運営を行っていますが、私たちの会社は、京阪電鉄より支払われる線路の使用料によって工事の時の借入金償還、利息の支払いなどを行っています」

第一種鉄道事業 :自社が保有する路線を使って、自ら旅客または貨物を運送する事業
第二種鉄道事業 :他人が所有する線路を使って旅客または貨物を運送する事業
第三種鉄道事業 :鉄道線路を第一種鉄道事業に譲渡する目的で敷設する事業、および鉄道線路を敷設して第二種鉄道事業に使用させる事業


      – 中之島線の線路は、京阪電鉄のものではないのですね?

「そうです。中之島高速鉄道が保有しています。ただ、線路保有だけでなく、京阪ホールディングス、京阪電鉄と連携し、中之島の活性化や中之島線の延伸の研究・検討等も行っています」


      – 中野社長ご自身の経歴についても、少しご紹介ください。

「私は大阪市立大学の工学部で土木工学を学んだ後、京阪電気鉄道株式会社、現在の京阪ホールディングス株式会社に入社しました。その後は、鴨東線(三条~出町柳)の建設工事や枚方市駅や寝屋川市駅周辺の連続立体交差化工事など、主に京阪電鉄の新線建設や高架化工事を担当してきました。
2002年7月より中之島新線建設工事の施工管理や事業運営管理などを担当しました。その後2017年6月から2021年の6月まで京阪ホールディングスの取締役常務執行役員、京阪電気鉄道の代表取締役社長を務め、2021年6月に、中之島高速鉄道の代表取締役社長に就任しました」

大阪市の東西軸を担う基盤施設として、計画・建設。


      – どうして中之島線が建設されるようになったのでしょうか。経緯などお教えください。

「大阪は、南北の都市軸に比べ、東西の都市軸がやや弱い。
その強化のための基盤施設として、以前より東西交通ネットワークの充実が急務とされていました。
また、四つ橋線以西の中之島地区は鉄道もなく、開発が遅れていましたので、開発の促進と増加が見込まれる交通需要への対応策として建設されました」

中之島駅ホームの最西端に飾られている、中之島線のシールドトンネル掘削工事に使用されたシールドマシンのモニュメント。鉄道ファンでなくても、思わず注目してしまう。★


      – 中之島西部地区の開発も、ワンセットだったのでしょうか。

「京阪ホールディングスは中之島線を建設するだけでなく、京阪の駅とその周辺部を、それぞれの地域特性に応じて再生することを目指し、現在、中之島、淀屋橋、京橋といった大阪市内東西軸の拠点開発を推進しようとしています」


      – 中之島線も開業以来14年経過しますが、地域の開発状況はいかがでしょう。

「利用者数は中之島西部地区開発により増加してきましたが、やはり新型コロナウイルスの影響により大きく減少しています。中之島地区は大企業が多く、テレワーク率が高いためかと思いますが、回復も遅れています。
中之島西部地区の開発については、まだまだ不十分だと思います。先ほどもお話しした通り、中之島線は西部地区の開発促進を主目的に整備されましたが、私ども京阪グループとしては、開発スピードは十分ではないと考えています。
現在、大阪市内の開発は『うめきた』が先行して進んでいますが、今後は『中之島』の開発も進めていただき、みなさまにもっと注目していただけたらと思います」


      – まちづくりへの要望として、具体的なものはありますでしょうか。

「中之島4丁目、5丁目の事業スピードを上げる必要があります。
中之島5丁目は土地区画整理事業がスタートしたとお聞きしていますが、街の面積が広く、街中に東西南北の歩行者動線が必要です。その動線に沿って商業店舗やオープンカフェを誘致するなどして、歩いて楽しい、くつろげる街になってほしいですね。また4丁目や6丁目との歩行者動線も整備が必要です。リーガロイヤルホテル前の堂島川沿いにある『中之島バンクス』などの施設と、歩道橋で街と接続してほしいです。これらをはじめ、3丁目から5丁目の土佐堀川沿いは、ぜひ遊歩道を整備してもらいたいですね」


まちづくりは行政と民間企業が一体となって進めていきます。中野社長は、まず中之島4丁目、5丁目の開発の必要性を、熱心に語られました。

木をふんだんに用いた駅を使い、芸術イベントも開催。


      – 中之島線が開通した時、地上の出入り口が美しく、びっくりした記憶があります。

「中之島という地域は、大阪人にとって誇りであり、特別な場所だと思います。国際、文化、芸術の街ですし、水都大阪の象徴的な街でもあります。その歩道や遊歩道を使い、駅の出入口を設置させていただくのですから、中之島にふさわしく、美しいものでないとダメだという思いが強かったわけです」

中之島駅の出入り口。美しくライトアップされた木の外観が、中之島の風景によくマッチしている。★

渡辺橋駅のコンコース。やわらかな印象を与える木質の壁が圧迫感を抑え、やさしい印象を与えている。★


      – どの駅も、「木」の印象が強いですね。

「地下駅でこれだけ大胆に木材を使ったのは、おそらく世界で初めてだと思います。あの木材は不燃処理を施したカナダ産の杉ですが、採用したことのお礼として関西カナダビジネスアソシエーションさまから、イヌクシュクのオブジェをいただきました」

渡辺橋駅に設置されたカナダ・イヌクシュクのオブジェ。
彫刻家ビル・ナソガルアク氏が制作したもの。★


      – 駅を使ったイベントなども、よく実施されているようですが。

「『キテミテ中之島』といったイベントを、毎年、京阪ホールディングス、京阪電鉄と一緒に実施しています。『キテミテ中之島』とは、中之島が持つ『文化・芸術の地』というイメージの発信を目指すもので、2012年から毎年開催しています。未来を担う子ども達をターゲットとして、さまざまなアーティストが企画から関わり、つくりあげています。駅を美術館にしてアーティストと子どもたちの作品の展示や、ワークショップなどコラボレーションの場として提供しています」

中之島の中心部ともいえる、大阪市中央公会堂のそばにあるなにわ橋駅コンコース。開放感のある吹き抜けによって、地下であることを忘れさせられる。★

大阪・関西万博の開催を見据え、大きく広がる中之島線の未来。


      – 中之島線の延伸予定など、お教えいただけますか。

「現在、中之島線はいわゆる盲腸線となっています。鉄道間の連携は非常に重要です。中之島線は大阪の東西軸となるべき路線ですので、さらに延伸し他社の路線と接続すべきだと考えています。万博に合わせ大阪メトロの中央線が夢洲まで延伸するので、私どもとしては、まずは大阪メトロの九条駅への接続に絞って研究や検討を重ねているところです」


      – 新型コロナの影響で利用者も減少していますし、延伸は起爆剤になるでしょうか。

「そうですね、テレワークの定着もありますし、どう利用者数が回復するかは重要です。また万博の跡地利用がどうなるかにも注目しています。建設の費用対効果、第二種鉄道事業者である京阪電気鉄道の収支も考えていかねばなりません。中之島のまちづくりにとっても、延伸は大きな意味を持つと思います。みなさんのご支援があれば、実現に向けて強い力になるでしょう」


      – 万博は中之島にとって、どのような影響をもたらすでしょうか。

「まずは中之島が万博に合わせて、関西の一大観光地になってほしいですね。
中之島は水都大阪の象徴的存在ですので、万博に向けてその魅力の向上と発信が重要です。
水辺や舟運の魅力を向上させるため、『中之島バンクス』や『八軒家浜』での店舗増設、渡辺橋や大江橋付近、中之島公園など、他の川辺や川上への店舗新設、『北浜テラス』のエリア拡大といったことも不可欠だと思います」


      – 一時は「中之島線」の万博会場延伸という話もあったように記憶しています。

「さすがにもう、間に合いませんね(笑)。会場への輸送手段としては、バス、舟運、そして空飛ぶクルマなどが考えられます。
バス輸送については、京阪グループとして中之島駅から万博会場へのシャトルバス輸送を、(公社)2025年日本国際博覧会協会とともに検討しているところです。
舟運についてですが、中之島エリアは橋から川までの高さの制限上、川舟でしか運航できません。川舟のままですと、安全性の面から海には出られないので、どこかで海船に乗り換える必要があります。
『中之島ゲート』(大阪市中央卸売市場付近)を乗り換えのための中継点とし、万博会場に来訪者を運んではどうでしょうか。
そのために中之島の各所に川船の船着き場を増設し、オンデマンドタクシーのような形でさまざまな場所から、『中之島ゲート』までお客さまをお運びできたらよいですね。会場である夢洲側の船着き場の整備や、会場までのバス輸送も必要となりますので、行政、舟運会社、中之島の関係者が一丸となって取り組むべき課題であると考えています」


2025年、中之島線を降り立って、このような船着き場から万博会場に向かう人の姿が、多数見られることだろう。★


      – 先ほど、「空飛ぶクルマ」も挙げられていましたが。

「空飛ぶクルマは、VIPの輸送や急病人搬送などを目的として、たとえば中之島の国際会議場ヘリポートから万博会場への運航が考えられます。
川の上の飛行なら、安全上のリスクが低いでしょう。
万博に向けて整備するMaaS(Mobility as a Service)には、バス輸送や舟運を組み込んでもらえれば利便性が向上します」

みんなで中之島の魅力を、国の内外に向けて発信しよう!


      – 今までのお話しをお聞きしますと、中之島にはまだまだ開発の必要があるという印象です。

「『中之島線』の整備に合わせて、大阪府が中心となって『中之島バンクス』『八軒家浜』『中之島ラブセントラル』などの水辺の賑わい施設を整備しましたが、水辺のインフラ整備はそこで止まっています。万博に向けて、インフラ整備を行う組織、体制づくりが必要だと考えます」


      – 他社路線ですが「なにわ筋線」も計画されています。「なにわ筋線」への対応は?

「『なにわ筋線』と中之島駅で接続することは、交通ネットワークが広がり、利便性が向上するのは間違いありません。それにより中之島西部地区の開発が促進されると期待しています。『なにわ筋線』の開通は、当社にとってもメリットが大きいと考えます。
『なにわ筋線』の中之島駅は、ぜひJR西日本の『はるか』や、南海電鉄の『ラピート』の停車駅になればと思います。関空から中之島を経由して、京都・伏見、東山、洛北エリアへのアクセスをきっちり確保することは、最終的には利用者のメリットにもなります」


      – 交通インフラは、まちづくりにも直結します。地域との連携などについてのお考えは?

「大阪の東西軸線として、中之島の地域のみなさんとはもちろんですが、八軒家浜~天神橋~中之島芝生公園~天神橋筋商店街~大阪天満宮参詣道とつないでいくことで、中之島公園を一種の『天満宮参詣道』と位置づけてはどうでしょうか? そうなると天神橋商店会さんとも連携し、中之島芝生公園を活用することも考えられます。天神橋を歩きやすい参道とするため、車道を1車線削って、歩道を拡幅するのも一案かもしれませんね」


      – 中野社長ご自身は、中之島という地域に、どのような印象をお持ちでしょうか。

「私も中之島が大好きです。中之島線の建設事業に合わせて、中之島は見違えるほど変化し、美しくなりました。私はお酒も好きでして、『中之島バンクス』、『八軒家浜』、『北浜テラス』での水辺で仲間と会食したり、川舟を借り切って飲食しながら遊覧したりするのも好きなんです。中之島公園に、よく愛犬を連れて散歩もしていますよ。」

中之島線の開通に合わせ、中之島の整備も進み街全体が美しくなった。上記は中之島バンクス。写真左が開通前。右が現在の様子。★


      – 最後に、「中之島スタイル」の読者にメッセージをお願いします。

「水辺、水上、公園…、中之島の広場をもっと活用して、これをお読みのみなさんも一緒に声をあげ、中之島の魅力をPRしてください。SNSなどを使って、みんなで中之島の魅力を、国の内外に発信していきましょう!」

中之島線の路線図を背に、「みんなで中之島の魅力発信を!」と呼びかけられる中野社長。
これからの中之島の未来を切り開くリーダーのおひとり。

中之島高速鉄道株式会社
住所 〒540-6591 大阪市中央区大手前1-7-31 OMM8階
電話 06-6944-9580
アクセス 〇京阪本線・京阪中之島線・地下鉄谷町線天満橋駅 下車徒歩5分
ホームページ​ http://www.nrr.co.jp/