あの方々は、『生活ヨガ研究所』所長である珠数 孝(じゅず たかし)さんが毎週開催している「リバーサイドヨガ」を楽しむみなさん。聞くところによると「リバーサイドヨガ」は、雨でも雪でも開催されているそうです。
「中之島をヨガの聖地にする!」、そう意気込む珠数さんに、中之島でヨガを始めた理由やヨガに対する想い、そして中之島の素晴らしさを熱く語っていただきました。
(トップの写真および★マークは、生活ヨガ研究所提供)
■仕事に疲れ切った仲間。自分に何かできることは? ・・・ヨガがある!
-珠数さんのプロフィールを拝見しますと、ご両親がヨガ道場をされていたとか…。
「そうです。私が生まれた当時、日本にはヨガの道場はまだ2つか3つほどしかなかったと思います。そういうところに、生まれてしまったんですね(笑)」
-それでは小さなころから、ヨガの英才教育を・・・。
「実は小さい頃はヨガは好きではありませんでした。小学校の頃は、習い事も生活もヨガ一辺倒。大人との合宿も絶対参加でしたし、食事は玄米だったし。白米へのあこがれは今でも根深いです。
家族旅行に行けば、旅先でヨガのポーズを取らされて、恥ずかしかった!(笑)
でも中学になると、『好きにしていいよ』といわれサッカーに夢中になり、大学ではウィンドサーフィンをやっていました。就職も建築関係で、ごく普通の会社員。ヨガとは縁のない生活でした」
-ごく普通の会社員が、再びヨガに戻ってきたのには、何か理由が?
「勤めていた会社はすごく業績が伸び、売り上げも右肩上がりだったのですが、その分猛烈に忙しくて疲れきってしまう人が増え、メンタルを病む人も出てきました。みんな疲れを誤魔化そうと、お酒などに走って…悪循環ですよね。
それで、何とかしてみんなを救えないものかと考えていた時に、『あぁ、ヨガがいいのではないか。身体と心に何かしらアプローチできる技術こそ、ヨガじゃないか』と思ったわけです。それで会社を辞めヨガを勉強し直し、インドに修行にも行きました」
-「心の健康」のためのヨガということでしょうか?
「私のやりたいヨガは、『働くという意欲が出てくるヨガ』ですね。ヨガを体験することで、もっと働きたいと思える、要するに活動的になれるようにしたいのです。
健康って、『病気の有る、なし』ではないと思うんです。『働きたい』という気持ちを持っている人にとっては、多少、腰が痛くても膝が痛くても、働けることが一番の幸せなんです。そういう前向きに働けるように気持ちを持っていける、後押しするヨガを目指しています」
-その考え方は、他のヨガスタジオとは異なるところといえますね。
「その人がその人なりに生きる、それが大事だと思っています。リラックスが必要な人は、リラックスを求めていいですが、リラックスしながらでは生きていけないこともある。
だから生徒のみなさんには、『与えられている力や自分の身体を、しっかりと活かせる状態を作ってほしい』と伝えています。」
■アウトドアに身を置くことで、自然を感じ前向きな気持ちになれる。
-『生活ヨガ研究所』のスタジオは、土佐堀川に面した天神橋の南詰にありますが、ここを選ばれた理由は?
「中之島に近いからです。もともと私は、アウトドアでヨガをしたいと思っていました。そして場所としては、中之島以外考えられません。梅田と難波の真ん中に、自然がいっぱいあって、こんなに心が揺さぶられて安らげる空間があるのですから、ここでヨガをしない手はないと思っていました。他の場所は、まったく考えていませんでしたね」
-最初から、アウトドアでのヨガを想定されていたのですね!
「アウトドアでヨガをしたいと思う理由は、2つありました。
まず、ヨガの普及。もっと男性に参加してもらいたかったのです。ヨガというと美容や痩身目的で、やはり女性の参加者が多い。男性に来てもらうには、ビルの奥のスタジオでは敷居が高いので、誰もが目にする場所でやる必要性を感じていました」
-研究所のマークとなっているイラストも、男性をモチーフにしていますね。
「男性にもヨガを届けたいという想いからですね。太っているからできない、運動が苦手だからできないという方がいますが、運動能力とか体形なんて、ヨガには関係ないんです。なぜならヨガは心ですから」
-「ヨガの普及」が1つ目の理由ですね。2つ目の理由は何でしょうか?
「アウトドアでヨガをやると、気持ちよくって前向きになれることが2つ目の理由です。
室内でのヨガは、どうしても自分に向き合うレッスンになりがちです。ヨガに来る人は『ここが固い』とか『ここが痛い』とか、自分でダメだと思いこんでいる人が多いんです。それが、アウトドアに身を置くことで、まず『気持ちよさ』の方が先に来るようになります。『この空間は気持ちいい。自分の深呼吸のために用意されている』と、前向きな気持ちになれるんです」
-珠数さんの『生活ヨガ研究所』以外のスタジオも、中之島でヨガをされているのですか?
「やっていますよ。最初の頃は、『珠数という人が中之島でやっているので、他のスタジオが行ったら悪いのではないか』という声もあったと聞いています。でも私はどなたが来られても、ウエルカムです。そもそも、それが目標でもありましたから。
私は当時、『中之島をヨガの聖地にする!』と吠えていました。今、まさにそのような状況になっています」
■一人ひとりが自発的に動くヨガ。それが自由で面白い。
-そのように多くの方が参加されているリバーサイドヨガですが、現在の生徒数は?
「コロナ前は1クラス80人以上になったこともありましたが、現在は15~20名ほどになっています」
-多数の参加者に、珠数さんお一人でレッスンされるのは、大変ではないですか?
「大変ですが、私は基本的にしゃべっているだけなんです、『語り』なんです」
-生徒さんの前で、ポーズを取ったりされないのですか?
「もちろんポーズもしますが、それだけなら私の物真似になってしまい、面白くない。もっと自発的に動いてほしいんです。隣の人と、全く違う動きでもいいんです。
だから、たとえば『風を触って』といってみます。風の触り方なんてバラバラじゃないですか。でも、それでいいんです。みんな自分の内側から動く、動きたいように動く、それが一番自由で面白いんです」
-自発的に動けない人もいると思いますが…
「自由に動くことが苦手な人も、もちろんいますよ。そういう人には寝転んでもらいます。寝転べば周りが見えなくなります。すると恥ずかしさも和らぐので、『足を上げてみて』とかいってあげると、ちょっとずつ心がほぐれていくんです。
そうなると『もうちょっと動かしてみようか』と、だんだん大きく動けるようにしていくんです」
-ヨガって、よくテレビで見るような、みんな同じポーズをするものだと思っていました。
「もちろんそれもありますが、みんなバラバラの動きのヨガもあっていいと思います。寝ているだけでもいいんです。わざわざ難しいポーズとかテクニックを使わなくても、芝生の上にゴロンと寝かしてあげるだけで、ガラッと変わる人もたくさんいます」
■1年に1度の「アウトドアヨガ祭り」は、過去2,000人以上の参加も。
-毎週のリバーサイドヨガ以外に、大きなイベントも開催されていますが、きっかけは?
「リバーサイドヨガを中之島でやる際に、水都大阪から恒常的にイベントをやるという条件が提示されました。それで今、『リバーサイドヨガFESTA』と『アウトドアヨガ祭り』の2つのイベントを行っています。
違いは、『リバーサイドヨガFESTA』は、生活ヨガ研究所が主催している事業であるのに対し、『アウトドアヨガ祭り』は、ヨガ仲間や友だち、インストラクター仲間と、『中之島にどんな景色を作ったら面白いだろう』と話し合い、全員がボランティアで作り上げているイベントであることです」
-どれぐらいの規模のイベントなのでしょうか?
「今年(2023年)の『アウトドアヨガ祭り』は、10月28日(土)と29日(日)の2日間開催します。中之島公園全体を3つか4つのゾーンに区切って、朝から晩までみっちりとヨガをやります。
インストラクター仲間が、それぞれ生徒さんたちを連れてくるので、2日間で25から30クラスぐらいのレッスンを行います」
-すごい人数になるのでは?
「最高で、2,000人を超えた時もありました。ただ参加者が増えると、ヨガに関係なく中之島に来られた方が、ちょっと居づらそうにされているので、申し訳ない気持ちになりますね。日常的に平和な景色を作りたいだけなのに、ヨガをする人があふれると、逆に異質な景色になっているように思えました。
参加される方からは、参加料をいただいているのですが、予算的にもなかなか厳しい状況です。警備の対応などはボランティアの手弁当だけでは限界があります。これからの運営については、今いろいろ考えているところです」
-大変なご苦労だと思います。『リバーサイドヨガFESTA』はいかがですか?
「年に2回、ゴールデンウィークと9月に行っています。毎週やっている『リバーサイドヨガ』の延長線上にあります。こちらはゾーンを中之島と八軒家浜の2つにわけて、私と友だちのインストラクターを呼んでやっています」
■中之島は、今も生きている自然の島。この豊かさを感じに来てほしい!
-珠数さんにとって、中之島の魅力とは何でしょうか?
「インドにガンジス川という聖なる川があります。ヨガの修行でインドに行った時、ガンジス川の横にいる喜び、川に触れる喜びを感じました。それほど『水』とか『川の流れ』って、人の気持ちを見直させてくれたり、揺さぶってくれたりするものなんです。そういうこともあり、私は川に近い場所にすごく魅力を感じています。
あのガンジス川の感じに、中之島が似ているんです。雁木の雰囲気とか剣先の様子、ガンジスの沐浴場もあんな感じになっているんです。だから勝手に、『中之島はヨガの聖地』だといっています(笑)」
-そんな『ヨガの聖地』で、これからどのようなことをやってみたいとお考えですか?
「今すでにやっていること、つまり『リバーサイドヨガ』、『リバーサイドヨガFESTA』、『アウトドアヨガ祭り』は、今後も継続してやっていきます。
新しくやりたいことは、中之島公園で寝泊まりすることですね。公園で朝を迎えたい」
-寝泊まり!?
「中之島で見る朝陽は素晴らしいんです。このスタジオに泊まり、太陽が昇る前にスタジオを出て、中之島でご来光を見るという早朝プログラムはやっているのですが、中之島で寝て、夜明けとともに目覚めるというのを、やってみたいと思っています」
-それは楽しそうですね。中之島って、いろんな自然と触れられる場所なんですね。
「ある方から、『中之島って、生きているんだよ』とお聞きしたことがあります。中之島はもともと砂が堆積してできた島だそうですが、今でも土を浚渫しないと、だんだん上流方向に大きくなっていくらしいんです。そうなると船の運航に差し障るので、浚渫しているのだとか。その『生きているんだ』という感覚が面白くって、何か好きなんですよね…」
-コンクリートに囲まれているけれど、生きている島…。
「そう、今でも中之島って、生きている自然の島なんです。その生きている島に、みんな乗って生きている。動植物も乗って生きている。
仕事に疲れたので、どこか自然を求めて山とか海に行くのもいいでしょう。でも私は、『中之島でいいんだよ、ここにこんな素晴らしい場所があるよ』といいたいのです。
中之島は、豊かなところです。植生も豊か。私やシティサップの奥谷さん※など、中之島を舞台に活動するプレーヤーも豊かで多士済々です。遠くに行かなくても、中之島でいくらでも面白いことができるよといいたいですね」